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静岡地方裁判所 昭和57年(ワ)324号 判決

被告が原告の主張する事実を陳述、流布したか否かについて判断する。

昭和五七年四月五日付新聞「靴商業」に「山野商店らを警告 ビーチの類似品でマルチウ産業」と題し、請求原因2記載の内容の記事が掲載された事実及び訴外会社が原告の取引先に対し、本件サンダルに表示された標章は訴外会社の稲妻標章に類似するから、本件サンダルを取り扱うと不正競争防止法に違反する旨の内容証明郵便を送付したとの事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実に成立に争いのない甲第五号証、第八号証を総合すれば、被告代表者小川喜清は昭和五七年四月初旬頃新聞「靴商業」編集長津田健治の取材に応じ、同人に対し、原告の製造販売にかかるサンダルが被告製品と類似するので当該商品の出所について誤認混同が生じる旨を陳述し、その結果昭和五七年四月五日付新聞「靴商業」に「山野商店らを警告 ビーチの類似品でマルチウ産業」と題し、請求原因2記載の内容の記事が掲載されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

しかしながら、被告が原告の得意先に対し、本件サンダルが訴外会社製品の偽物でこれを販売すると不正競争防止法に違反するから取り扱わない方がよい旨触れ回つたとの事実及び被告が訴外会社と共謀し訴外会社をして原告の取引先に対し前記内容証明郵便を送付したとの事実を認めるまでの証拠はない。

三 被告は、原告の本件サンダルの製造販売行為が不正競争防止法一条一項一号に該当する不正競争行為である旨陳述、流布したとしても、真実に合致する内容であり、かつ正当な業務行為であるから同法一条一項六号に該当しないと主張するので、以下この点について判断する。

前記当事者間に争いのない事実に成立に争いのない甲第六、七号証、乙第三ないし第五号証、第八号証、第一一号証、第一二、一三号証の各一、二、第一七号証の一ないし五、同号証の七及び九、第一九、二〇号証の各一、二、第二一号証の一ないし四、第二二号証の一ないし五、第二五号証、証人鈴木弘一の証言により真正に成立したものと認められる乙第一〇号証、同証人の証言を総合すれば、訴外会社の稲妻標章はハワイでサーフアーとして活躍していたジエリー・ロペスが一九六〇年代にサーフインのスピード感を表わすため稲妻を図形化してサーフボードに付していたもので、その後、ロペスは自ら経営していたライトニングボルト・アンリミテツド・サーフ・カンパニー・インクリネーシヨンで右標章及びこれを文字で表示した「BOLT」「LIGHTNING BOLT」を付したサーフボード、トランクス、Tシヤツ、サンダル等サーフイン関係商品を販売していたが、一九七六年これらボルト標章についての権利を訴外会社に譲渡するとともに自身訴外会社の副社長に就任し、訴外会社は以後稲妻標章を同社のシンボルマークとしこれを商品に表示して積極的に販売活動を行なつていること、その間、昭和四六年頃ボルト標章が表示されたサーフイン関係商品は、数量は限られていたがわが国に輸入され、その後、サーフインの普及に伴いその需要が増大し、株式会社ボルトサーフが設立されるところとなり、同社は、昭和五一年九月一日訴外会社との間でボルト標章についての専用使用許諾契約を締結し、ボルト標章が表示されたサーフイン関係商品を製造販売するとともにサーフイン専門雑誌等に広告記事の掲載を依頼して積極的な宣伝販売活動を行なつたこと、右契約は一年で終了したが、引き続き訴外株式会社ヨシダがボルトサーフ社と同様訴外会社との間でボルト標章についての専用使用許諾契約を締結し、サーフイン関係商品を始め帽子、ジーンズ、バツク、時計、アクセサリー等を製造し、これを訴外ライトニングボルトジヤパン株式会社が相当数のスポーツ用具店等を通じ販売するとともにサーフイン専門雑誌はもとより一般雑誌等に広告記事の掲載を依頼し、漸次売上高を伸ばし、ボルト標章は関係業界を始めサーフイン愛好者はもとよりスポーツを愛好する若者の間で広く認識されるようになつたこと、そして、被告は昭和五四年一月訴外株式会社ヨシダとの間でサンダルの製造販売についてボルト標章の再使用許諾契約を締結し、その頃からボルト標章が表示されたビーチサンダル等を製造販売し、原告も被告と時期を同じくして本件サンダルを製造販売していること、ところで、本件サンダルにはサンダル台の左足の外側側面以外に右足の内側側面と別紙物件目録記載(一)ないし(三)のサンダル鼻緒にも別紙標章目録記載(イ)の標章が表示されてあり、被告製品のサンダル台には左足の内側と右足の外側の各側面及び鼻緒に稲妻標章が表示されてあるが、本件サンダル台の左足の外側と右足の内側の各側面及び本件サンダルのうち別紙物件目録記載(一)ないし(三)のサンダル鼻緒に表示された右標章はいずれも訴外会社の稲妻標章と同一ないし同一といつてよい程酷似し、被告製品のサンダル台の左足内側と右足の外側の各側面及び鼻緒に表示された標章とも同様に酷似していること、なお、本件サンダル台の左足の内側と右足の外側の各側面には稲妻標章と前記のように酷似している別紙標章目録記載(イ)の標章が向きを逆にして表示されてあり、右標章は被告製品のサンダル台の左足の外側と右足の内側の各側面に別紙標章目録記載(ロ)の標章のように向きを逆にして表示してある稲妻標章と前記同様に酷似していること、原告が昭和五七年一月頃稲妻標章と前記のように酷似している標章を付して製造販売していた他のサンダルには鼻緒に「SURFING BEACH」あるいは「GOOD WAVE」と表示する商品があり、本件サンダルを含め右のようなサンダルにサーフイン関係商品としてのイメージを付し、また、その頃原告が製造した右のようなサンダルを新発売する紹介として「シヤープな稲妻ライン」等の字句が使用されて原告の標章が稲妻をデザインしたものであることを強調した広告記事が業界紙に掲載されていることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

以上認定の事実によれば、訴外会社の稲妻標章は遅くとも本件サンダルが製造販売される以前日本国内において周知の標章であつたといえるのであつて、本件サンダルに表示されている標章はこれと同一ないし同一といつてよい程酷似するから、本件サンダルに接する者は当該商品が訴外会社又はその関連会社の製造販売するサンダルであるとの印象を受ける虞があり、原告の本件サンダルの販売行為は訴外会社のボルト標章の再使用権者である被告が製造販売するサンダルとの間でその商品の出所について誤認混同を生じさせ、本件標章と同一ないし類似する標章が付されたサンダルを販売する者が多数現われることになれば被告製品のサンダルに表示された標章の持つ顧客吸引力が低下することは当然であるといえるのであるから、被告は不正競争防止法一条一項柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」に該当するといえる。

原告は訴外会社の稲妻標章が装飾模様としてデザインされたもので商品表示として機能していないから、本件サンダルと被告製品のサンダルとがその出所につき誤認混同を生じる余地はないと主張するけれども、前記のとおり右稲妻標章は訴外会社の標章として主としてスポーツを愛好する若者の間で広く認識され、その商品表示としての識別機能を有していることは明らかであるから、原告の右主張は採用できない。

原告は本件サンダルの製造販売行為は意匠法に基づく権利行使にあたり不正競争防止法六条により同法一条一項の適用が排除されると主張するけれども、本件サンダルが右登録意匠の実施製品であるか否か、あるいは原告がその標章を本件サンダルに使用した主観的意図はともかく、右登録意匠の使用は客観的に出願当時既に日本国内において周知であつた訴外会社の稲妻標章のイメージを借用する結果を招来するものであつて、信義則に従つた意匠権の行使とはなしがたく、不正競争防止法六条にいう意匠法に基づく権利行使とは認められない。

以上のとおりであるから、被告は原告に対し本件サンダルの製造販売行為につき不正競争防止法一条一項一号に基づく差止請求権を有するものということができ、前認定のとおり被告代表者が新聞「靴商業」編集長津田の取材に応じ同人に対し本件サンダルが被告製品のサンダルと類似するので当該商品の出所について誤認混同が生じる旨陳述し、その結果昭和五七年四月五日付新聞「靴商業」に「山野商店らを警告 ビーチの類似品でマルチウ産業」と題し請求原因2記載の内容の記事が掲載されたとしても、被告がその営業上の利益を守るため真実に合致する客観的事実を述べこれが右新聞記事となつたにすぎず、同項六号の虚偽の事実を陳述、流布する行為にあたるものではないといえる。

四 よつて、原告の本訴請求はその余について判断するまでもなく理由がないから棄却する。

〔編註〕 本件で原告の主張した登録意匠は左のとおりである。

登録 38326号意匠(55、6、26登録)

登録 532959号意匠(55、3、28登録)

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